概要
髄膜炎菌による感染症で、発熱、頭痛、嘔気などの症状が見られ、髄膜炎や敗血症などの侵襲性髄膜炎菌感染症を合併することがあり、侵襲性髄膜炎菌感染症の致命率は7〜19%と報告されています。国内でも2011年5月に宮崎県にある高校生寮内で集団発生が認められています。特にアフリカ中央部の髄膜炎菌ベルトと呼ばれる地域で髄膜炎菌感染症が多く流行しています。他にもアメリカやイギリスといった先進国でも特に学生寮で集団生活を行う若年層を中心に、年間1000人以上の発生が報告されており、近年はオーストラリアでの発症が増えています。欧米諸国の多くで髄膜炎菌ワクチンが定期接種化されています。髄膜炎菌ベルトや定期接種化されている国に留学や就労などで渡航する際は、特に寮などで集団生活をする場合、接種が検討されるワクチンです。
日本渡航医学会など関連学会からは以下の人たちを接種対象者として挙げています。
- メッカ巡礼に際してサウジアラビアに渡航する人
- アフリカ髄膜炎菌ベルトに渡航する人
- 定期接種国へ留学する人
- 寮など集団生活を送る人
- 医療関連施設で働く人
- 髄膜炎菌を扱う可能性のある臨床検査技師や微生物研究者
- 大規模イベントの大会関係者で髄膜炎菌の流行国からの参加者と接触する可能性が高い人
- 補体欠損症・無脾症もしくは脾臓機能不全、HIV感染症などの人
- エクリズマブ・ラブリズマブを投与している人
接種回数と注意点
日本では2歳以上で接種が可能です。2歳以上の場合、1回接種で免疫は付与されますが、5年で免疫が落ちてくるため、リスクが高い状態が続く場合は追加接種が検討されます。つまり、最後の投与から5年以上経過している場合に、追加接種が検討されます。
日本で唯一利用可能な髄膜炎菌ワクチン(メナクトラ®)は医薬品医療機器等法上は年齢制限はありませんが、日本では2歳未満、56歳以上の安全性および有効性は確立していないとされており(臨床研究の対象年齢がそうなっていたためです)、2歳以上でないと接種できません。アメリカではメナクトラ®は生後9ヶ月以上で利用可能で、2歳になるまでは3ヶ月の間隔をあけて2回接種する必要があります。
ちなみにアメリカでは特に暴露リスクや重症化リスクが高くない場合は、定期接種として11歳で初回の接種を、16歳で2回目の接種を行いますが、髄膜炎菌ベルトのよるな高流行国に渡航する場合は、暴露リスクが高いとして、生後2ヶ月から接種を推奨しています。しかし生後2ヶ月から接種できる髄膜炎菌ワクチン(MenACWY-CRM)は日本では未承認です。